叫べ、叫べ、大きく叫べ!

「はやく離婚しちゃえばいいのに」


ポツリと放った言葉は風によってかき消されるけど、“離婚”というワードは頭を支配している。


随分前からそう思ってきた。

喧嘩するなら、そうしたらいい。
毎日機嫌悪くなるなら、そうしたらいい。


私たちは何も悪くないのに、睨まれて、怒鳴られて。
母の言うことは忠実に守ってきたし、従ってきているのに。


もうこんな生活はうんざりなんだよ。
なんでわかんないの?
なんで、分かろうとしてくれないの?


思えば思うほど不満ばかり溢れる。



「……家族なのに」


なんで仲良くできないの?
なんでこんな家族になっちゃったの?
なんで……?


そればっかが頭の中でループしていく。


小さな雲がひとつ。真っ青な空に流れてきた。


空に手をかざしてそれを掴むみたいに握る。


雲の流れが早くて手の中から逃げていく様に私の醜い心も綺麗さっぱり無くなってくれればいいのにと何度も願う。


ふと身体を起こして、梯子をおりて、フェンスに近寄った。


網目を掴むとカシャンと錆びついた金具音がなる。


そこから覗く景色はあまりにも殺風景だった。


そう見えてしまうのはやっぱり私の心の問題なのかもしれない。


もっと綺麗な心の持ち主だったら、この景色を見て、こんな何も無いただの街並みを「綺麗だ」と思うのだろうか。


今の私には、到底思えないなぁ。


フッと鼻で笑う。

我ながらにして可哀想に思えてしまった。


私の心は死んでいるのかもしれない。

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