叫べ、叫べ、大きく叫べ!
「え、……なんで、」
「あはっ、もう帰ったかと思った?」
ちりとりで集まったゴミを丁寧に取りながら時折私に視線を向けて笑う彼――都波雅。
都波は私の後ろの席の人。
このクラスのリーダー的存在で、見たまんまのチャラ男だ。
長すぎず短すぎない髪は緩やかなウェーブがかかっていて、ミルクティーを連想させるような色。
綺麗な二重でまつ毛が長い彼は下から見上げて私に笑いかけてくる。
その人懐っこいイメージに学年の女子は酔いしれているみたいだけど、私は大がつくほどの苦手人物。
なんでこいつがいるの……。
そう思うと顔がみるみる引きつっていくのが分かるほど私は相当苦手。
「ゴミはこれで全部?」
「あ、はい」
「んじゃ、あとはゴミ捨てだね」
そう言ってまた丁寧にゴミを集めた彼はゆっくり立ち上がってそれをゴミ箱に捨て、ちりとりをロッカーへ戻す。
私も片付けようとロッカーに近づくと持っていた箒をスっと取られて、都波が仕舞ってくれた。
「ありがとう」
「いーえ〜」
嬉しそうに笑う彼に心做しか胸が弾んだ。
はじめての感覚に少し焦る。
急に人間らしい反応した自分に戸惑いすら感じてしまって、近くにいる彼から漂う甘い香りに普段なら臭くてたまらないと鼻をつまみたくなるのに、
今はなぜか嫌な匂いに感じない……。
おかしいな。
そう思いながらゴミ袋に結び目を作っていると「園田さん」と呼びかけられた。