叫べ、叫べ、大きく叫べ!
職員室前を通ったとき、突然“なにか”を感じた。
視線とかそういうのじゃない。
本当に“なにか”。
隣にいる都波は勝手にペラペラ喋っているだけだから関係ないと思うし。
なんだろう……。
「ん?どうかした?夏澄ちゃん」
私が見ている方向に合わせるように顔を近づけてくる都波。
近いとか、そんなこと思うよりも私の名前を呼んだことにゾッとした。しかも下の方。
き、きもちわる……!
こんなにも苦手意識しかないのにこれ以上もの苦手意識を増やしてくれるとは……。
都波雅って人は、恐ろしい。
「職員室寄る?」
「……なんで」
「見てるの職員室だから……?」
見上げると彼は首を傾げて私に「あはは」と笑う。
なんだその顔は。
私に笑ってほしいとも思っているの?
残念。相手に誘導されるような質じゃないんで。
でも、職員室の方を見てしまっていたのは事実。
気になったのか分からない。
けど職員室で1人の男子生徒と先生が話している様子になぜか目を奪われた。
とくに後ろ姿をこちらに見せている男子生徒に目が離せなかった。
“なにか”を感じ取ったのはこの人のもの?と一瞬思ったけど、そんなことは無いだろうと胸の中で首を振る。
だって、背中になんて眼は無いんだから。