叫べ、叫べ、大きく叫べ!
私は職員室から視線を外して何も見てなかったかのように足を早める。
ゴミ捨て場に到着してやっとこの人から離れられると思うとものすごく疲れがドっとのしかかってきた。
すぐその場を立ち去ろうと彼に背を向けるとなぜか私を呼び止める。
ピタッと立ち止まってしまった私に近付いてきた彼は相変わらず人懐っこい笑みを浮かべてる。
そしてポケットからスマホを取り出して言う。
「交換しよ」
瞬時に言っている意味が分かってしまうあたり私はなんで鈍くないのだろうと嘆きたくなった。
ほらほらと画面をこちらに向けて振る様に眉をひそめてしまう。
「だめ?」
なんでそこでシュンとするの。
まるで感情表現豊かな大型犬だ。
ゴールデンリトリバー辺りかな犬種……。
って、なに例えてるんだ私は。
「交換したところで無駄だと思うけど」
「なんで?」
「なんでって、……私つまらないし」
そもそもあんたが嫌いなんだけど。
なんて心の中で付け加えた。
その事に気づかない都波は「そんなの関係なくない?」と少し困ったように笑いながら首を振った。
「仮に、私の連絡先知ってどうするの」
つい最近席替えしたばっかで、たまたま後ろの席で、話したことも数えるくらいなのに。
都波とは住む世界が違うのだから、会話なんて成立しないんじゃない?
こんな暗い私とは話す言葉もない。
まず私がない。都波と話す内容が。ただでさえ人と話すのも苦手なのに。