叫べ、叫べ、大きく叫べ!
「そうかな?俺結構目利きはいい方なんだけどな」
首を傾げてフェンスから手を下ろしたその隙に、私は逃げるように距離をとった。
振り向くと意外にも滑稽な顔をした彼がいて。
“やられた!”とでも思ったのかあっけらかんとした表情で私に視線を送る彼に私は何を思ったのかプフっと笑ってしまった。
久しぶりにこんな吹き出すような笑い方をした。
あまり笑わなくなってしまったせいでツボが浅くなってしまったのか、なかなか笑い止まることができなくて。
自分はこんな笑い方も出来たのかと感心する。
深呼吸をして抑えると深く息をついた。
都波はなぜか1歩も動いてなくて、その場でポカンと口を開けて私を見ている。
きっと私がいきなり笑いだしたから何事だと思いとどまったのだろう。
だってチャラ男がじっとしているなんて私のイメージからしたらおかしい。
それでも私にとっては帰るチャンスだから助かる。
身を翻して校門へ向かう途中、私は足を止めてまた都波を見た。
まだ口を開けて私を見ていることに、この人だけ時が止まっているみたいだ。
そんな彼にこれだけは言っておかなきゃと思い口を開く。
「都波くんありがとう。掃除一緒にやってくれて」
なぜか手を振ってしまったけど意味は特にない。
彼からやっと解放されたことに嬉しかったからかもしれない。
ふと頬が緩んでいることに気付いた私は足を速めて、今度こそ帰路を辿った。