叫べ、叫べ、大きく叫べ!
「2人ともごめんな。でももう終わりにしたい。……じゃこれ書いといて。また今度取りに来る」
バタンと閉まったドアの向こうから父が早々に出ていく音を確認して、静けさがやってくる。
そして私の腕も解放された。
母が離れてくれる。そう思った瞬間──頬に痛みが走った。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
痛みが残っていることだけが不思議で、無意識に頬を押える。
視線はそのまま母を辿った。
そこには栞那を抱きしめている母が。
「栞那ちゃん大丈夫?ごめんね?私を庇ってくれてありがとう」
信じられない言葉に目を剥いた。
───庇ってくれて?
何を言っているの? 栞那が庇った?……いつ。
そう疑問に思っているとすぐに謎は解けた。
「あなたのお姉ちゃん見た?この私が傷付いてるのにあの人こと庇ってたのよ。酷いったらありゃしない。それに比べて栞那は凄く親思いよね。叩かれそうになった私を庇ってくれたんだもの。お母さん嬉しい。ありがとう」
私を見る目は嫌なものを見るかのようなソレで、栞那は愛おしそうに見ている。そして優しく抱きしめている。
その様子に反吐がでそうなくらい気味が悪かった。
栞那は私を見上げてバツが悪そうに顔を歪ませている。
……そうだよね。知ってるよ。
いつだって母にとっては妹の栞那が大事であることに変わりないから。
大丈夫。栞那はそれでいいんだよ。
私は栞那にそっと微笑み、静かにその場を離れた。