time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~
俺に暴言を吐いたかと思うと、スタスタと歩いていってしまう。


確か、あの男の前ではもっと柔らかい話し方をしてなかったか?


あの男だけじゃなく、誰の前でも言葉遣いが昔より綺麗になっていたと感じたのは気のせいか?


暴言を吐かれたってのに、懐かしさに顔が緩む俺は俺じゃないみたいだ。


段ボールを抱え、お前の背中を追い掛ける。


「おい。歩いてどこまで行く気だよ。」


「もう着いた。」


「あぁ?」


馬鹿にしてんのかと、怒鳴ってやろうと思ったが、辺りを見回して俺は目を疑った。


「たまたま空いてたんだ。荷物、中に入れてくれ。」


当たり前のように鍵を取出し、部屋の中へと入って行くカナ。


「ここ……」


「何してんだよ!さっさと入れよ。」


身動き一つとれなくなった俺に、少しイラついたような声が届く。


……どうして、この場所?

お前は何を想ってる?


本当に俺との人生を選んだってことなのか?



「豊?どうしたんだよ?」


なかなか部屋へと入らない俺を心配したのか、カナが外まで迎えにくる。


「……な、なんでここなんだよ?」
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