time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~

「文ちゃん。」


「ん?」



何杯飲んだかも自分ではわからないけれど


“今なら聞ける”


そう思ったタイミングであたしは口を開いた。



「浅葱って覚えてる?」


「えっ?」


何故だか可笑しな反応をする文ちゃん。



「スナックに通っていた、あたしのお客さん。店を変えても通ってくれていたの。」


「覚えてるよ。」


「浅葱はあたしがスナックで働く前からの常連だったって聞いた気がして……」


「あぁ。確か、そうだった。」



文ちゃんが可笑しい。


浅葱という名前を出すたびに、あたしから視線を逸らす。


「浅葱についてどんなことでもいいから、知ってることを教えて。」


「それまたどうして?」


文ちゃんはきっと嘘をつくのが下手くそだ。


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