国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
翌朝、暗かった空がうっすらと白み始め、太陽が地平線に姿を見せるとジョシュは家を出た。

他の小屋に住む男達も同様だ。帆船に向かっている。

波のない静かな水面に帆船はぴったりと簡素な桟橋につけられている。

ジョシュと同時に祖母は長老の元へ行った。

家から出てはいけないと祖母に言われていたが、ルチアは好奇心が抑えられず抜け出した。

そっと音をたてないように海の中へ飛び込み、帆船の近くまで泳いでいく。

島の男たちが帆船へ乗り込むところだった。

ここに住んでいるほとんどの男たちが帆船へ乗り、おそらくここには老人と女、子供しか残っていないだろう。

見つからないように桟橋の陰からのぞいていたルチアは、帆船に乗り込むみんなの姿を見て言いようのない不安にかられた。

その時、帆船の上からひとりの男がいることに気づいた。乗り込む男たちや集落を見ている。

ルチアはとっさに海の中にもぐり、その場所から見えない木の陰に隠れる。

そうしてもう一度、見るとその男はいなかった。

大柄な身体に茶色の短髪。一瞬だけ見た顔は精悍な顔つきで、一族の男と全く違う男にルチアは見た瞬間、震えが走った。

島の男たちを乗せた帆船はゆっくりと動き出した。

動き出した帆船のせいで、考え込んでいたルチアは頭から波を受けて驚いた。

大きな波が襲いかかり、橋をつなぐ木がギシギシと悲鳴をあげている。

何回も帆船に来られたら、桟橋が崩壊してしまいそうだ。

もう一度帆船の方を見ると、船体は小さくなっていた。

(どこへ行くのかしら……帆船が向かう方角は危険を伴う海域なのに……まさか、あそこで潜らせるつもりじゃ……)


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