国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「とにかく、報酬もくれるっていうんだ。街で好きな物を買えるだろう。ルチア、待ってろよ、俺が働いて好きな物を買ってやるからな。それに木材も買わないとな」

ジョシュはルチアに好きな物を買ってやりたい気持ちと、老築したこの小屋を直したい。

この島には小屋を補修できるほどの大きな木がなく、直すには木材が必要だ。

その気持ちでこの仕事を引き受けたらしい。

「ジョシュ、わたしも潜るわ!」

ルチアは漁を禁止され、沈没船探しは退屈しのぎでワクワクした。

「ルチア!」

祖母の驚愕した声にルチアはキョトンとなる。

「どうしたの? 漁じゃないし。それに、報酬がもらえるのでしょう? 暇つぶしになるし」

楽しそうな顔で話すルチアにジョシュは口を開く。

「いや、お前はだめだ。女や子供がやる仕事じゃない」

「そうさ。お前は行ってはだめだ!」

「ジョシュ! おばあちゃん!」

また女であることが邪魔をして、両手にこぶしを握り憤るルチアだ。

「わたしは誰よりも長く潜っていられるわ。ジョシュよりも」

「ルチア、今は俺たちに任せてくれ」

ジョシュのこんなに真剣なまなざしは初めて見る。ルチアはしぶしぶ頷いた。

この時、ジョシュやルチアは安易に考えていたのだが、実際は非常に苛酷な労働作業になることを後になって気づくのだった。


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