国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「ユリウスさまは城におられるとき、一日一回は祈りを捧げています」

「毎日?」

「ええ。今はとても平和な国ですが、数年前は我が国を狙う国と戦っていました。その犠牲者を弔うため、平和のためにユリウスさまは祈られるのです」

数年前まで国が戦っていたと知り、ルチアの心が痛んだ。
 
ルチアも祭壇に向かって両手を組むと、犠牲者が安らかに眠りますようにと祈りを捧げた。

「では大広間へ参りましょう。そこで隣国の王室の方や我が国の貴族たちを招いて夜会が時々あります」
 
礼拝堂は城の外れにあり、大広間は中央棟の1階にある。

大広間へ行くまでに足音が吸収されてしまう絨毯や、ルチアなど値段がまったくわからない豪華な花瓶などの調度品が置かれている。
 
人の1.5倍ほとある大きな観音扉を開けたアローラはルチアを中へ入れた。
 
中ほどへ進むと、壁に等身大の絵画がかけられていた。
 
ルチアは目を引かれ、それに近づく。

「これは……?」

勲章を肩にたくさんつけた白い礼服姿の男性はユリウスのようにシルバーブロンド。

違うのはユリウスと違って短い。その隣には光り輝くようなブロンドを結い上げ、宝石の冠をのせている。

そしてふたりの間には顎のラインで切りそろえた母譲りのブロンドに、大きなサファイアブルーの瞳の女の子が立っていた。

「王弟殿下とお妃さま、姫さまですわ」

(この方たちが……わたしの……両親かもしれない……)

しかし小さな女の子はエラに似ている気がして、自分は違うのかもしれないと思ってしまう。

(おばあちゃんは嘘をついているの……?)
 
結婚まで延期しているのだから、祖母の話が嘘だったら罪は重いだろう。

「こちらはユリウスさまの父君と母君です。八年前に暗殺されてしまいました。その後、ユリウスさまが継がれたのです」
 
アローラの声にハッとなり、隣に掛けられている絵画に目を向けた。
 
ユリウスはがっしりと厳めしさのある父よりも美しい母に似ていた。

「それではお庭を案内いたします」

ルチアはまだ二つの絵画を見ていたい気持ちを抑えてアローラについて行った。


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