国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「ルチア、あれを食べましょう!」

店先で細長いパンみたいなものを揚げて、砂糖をまぶしている菓子をエラは指さす。
 
食欲がないルチアは首を横に振る。

「エラだけ食べて」

「わたしだけ? うん、いいわ。少しあげるわね」
 
エラはシャツの前ボタンがはち切れそうなくらいふくよかな男性店主に「ひとつ下さい」と言っている。
 
ルチアの食欲がないのは、黙って出てきたことが尾を引いているからだ。
 
持ち手だけ紙に包まれた細長い菓子をエラが持って、ルチアの元へ戻ってきた。

ルチアは活気ある人々の邪魔にならないように端に立っていた。
 
一口かじってルチアの口元へ持ってくる。

「美味しいよ。ルチアも食べて」
 
ルチアは仕方なく、それを少し口にした。
 
口の中に砂糖の甘さが広がる。

島の食生活と街とでは全く違っていて、ほとんど食べたことが無いものばかりだ。

新しいものを知ることは嬉しいが、ルチアはやっぱり帰ろうと思った。

(こんなのちっとも楽しくない)

「エラ、帰ろう? アローラさんも心配しているだろうし、もしかしたらユリウスさまの耳にも入っているかもしれないよ」

「ルチアったら意外と気が弱いのね」
 
エラは笑ったが、ルチア越しの少し離れた先を見て、すぐに泣きそうな顔になった。

「これを持って!」

揚げパンをエラに持たされたルチアはキョトンとなる。

「ユリウスさま!」
 
訳が分からないルチアをその場に残し、エラは白馬に乗るユリウスの元へ駆けていく。

ユリウスは街の人々が囲まれ、思うように進めないようだ。

「エラ!」

ユリウスの言葉に、街の人々がざわめく。

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