国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「もしかして、あのお方は姫さまじゃないのか?」

「きっとそうよ! とても可愛らしい方だわ!」
 
ユリウスに近づくエラは人々によって、道が開けられた。

騎乗していたユリウスは身軽な身のこなしで白馬から降りた。

「ユリウスさま!」
 
笑みを浮かべたエラは、凛々しい姿のユリウスに近づくと抱きついた。
 
その瞬間、街の人々が感嘆のため息でその場がざわめく。

「おおっ! なんと似合いのおふたりだろうか」

「おふたりの姿を拝見できるなんて幸せだわ!」
 
ふたりを取り囲む群衆のせいで、ルチアは近づくことが出来ない。人々の間を通ろうとするも、ドレスが踏まれ倒れそうになる。

「邪魔だよ!」
 
ルチアの長いブロンドが何かに引っかかる。

「あっ! きゃっ!」

とうとうルチアは転んでしまった。

ユリウスとエラを見るのに夢中の人々に蹴られ、髪も踏まれ、ルチアは気が遠くなりそうだった。そこへ誰かの手によって、起こされる。

「ありがとうございます」
 
立ち上がったルチアはドレスの汚れを手で払い、お礼を言ってから顔を上げる。

「ジラルドさま……」
 
彼は厳しい目でルチアを見ている。
 
そこへようやくユリウスがルチアの元へやって来た。髪が乱れ、ドレスに汚れをつけているルチアを見てため息を漏らすユリウス。

「大丈夫か?」

「……はい」
 
心配で城から出てきたのだろうと、ルチアは謝ろうとすると――

「ユリウスさま、ごめんなさい。わたしは来たくないって言ったのに、ルチアが強引で……」
 
エラが瞳に涙を溜めながら、ユリウスに謝る。
 
ルチアはエラの嘘に言葉が出なかった。

あ然となっていると、ユリウスはルチアをエメラルドグリーンの瞳で見つめたあと、ジラルドに「彼女を連れてきてくれ」と言い、エラを白馬に乗せ自分も騎乗した。
 
その姿にルチアの胸がズキッと痛む。

(ユリウスさまはエラを信じたに違いない……)
 
そう思うと悲しくなり、涙が出そうになる。


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