国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
これほどまでに馬を嫌う人間をジラルドは見たことがない。

自分たちにとって馬はなくてはならない大事な友人みたいなもの。
 
見たことがないのなら無理もないかと、ジラルドは思った。
 
戻りが遅いことに気づき、ユリウスさまが護衛をひとり出してくださるといいが……と、ピョコピョコと脚を引きずりながら歩くルチアを見ながら思った。

そこでジラルドは気づく。

「ルチアさん、足が痛いのではないですか?」

「これくらいたいしたことありません」
 
本当のところ、かなりやせ我慢をしているが、馬には乗りたくない。いや、乗りたくないのではなく、この優しい目の生き物が怖いのだ。

 
ジラルドは苦虫をかみつぶしたような表情で、城への道をルチアに合わせて歩くしかなかった。
 
城まであと半分のところまでの森を歩いていると、向こうからユリウスが馬に乗ってひとりで姿を現した。
 
駆けてくる白馬にルチアは心臓が暴れ出し、瞳に恐怖の色を映し出す。

「きゃーっ!」
 
ルチアは頭に両手をあてて、その場にしゃがみこむ。

「ルチアさん!?」
 
ジラルドはしゃがんだままブルブル震えるルチアに驚く。

「どうしたんだ!?」
 
ユリウスを背に乗せた白馬が、ふたりの前でぴったり止まると、ルチアは顔を引きつらせて地面に倒れた。

「ルチア!」
 
白馬から降りたユリウスは血相を変え、ルチアの上半身を抱きかかえるジラルドの元へ行く。

「いったいどうしたんだ!?」

「おそらく馬恐怖症かと。先程から怖がっていましたから」

「馬恐怖症……それで戻りが遅かったのか……気を失っているうちに馬で戻ろう」
 
ユリウスは白馬に騎乗すると、ジラルドからルチアを抱きとった。


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