国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「まだ君が姫ではないと決まったわけではないが、良からぬことを企む輩(やから)に攫われたらどうする?」

「わたしが狙われるわけがないです。エラを気遣ってください。街の人たちにエラが姫だと知られたんですから」
 
ルチアはベッドから出ようとするがユリウスの手が止める。

「ルチア! 体力が落ちているんだから、まだ寝ているんだ」

ユリウスはエラを連れて先に戻ったのは理由がある。ルチアが街の人々の目に付かないようにするためだ。
 
そこへ扉が叩かれ、ユリウスはジラルドに呼ばれる。執務室へ戻らなければならない時間だった。

「また来る」
 
ユリウスはルチアの頬にそっと手をあてると、出て行った。

「っはぁ……」
 
ルチアは大きく息を吐いた。
 
扉が閉まるまでルチアは緊張から無意識に息を止めていたようだ。

一度起き上がるが、ユリウスの言うように体力が落ちているようだ。もう一度頭を枕に付けると、まどろみの世界に身をゆだねた。



夕食はルチアの身体の大事を取り、アローラがベッドに運んできた。

「アローラさん、昼間なにも言わずにいなくなってしまってごめんなさい」
 
ルチアは彼女の顔を見ると、すぐに謝った。

「心配しましたが、ルチアさんの考えじゃないことはわかっていますよ。さあ、どうぞ食べてください」

「ユリウスさまは……」

「また来る」と言って出て行ったせいで、食事のときに会えると思っていたルチアだ。

まだユリウスは自分に怒っているのだろうかと、ルチアは顔を曇らせた。

アローラはしゅんと顔を暗くさせたルチアを見て口を開く。

「おひとりのお食事で寂しいとは思いますが、北にある採掘所の山が崩れ、怪我人が出てしまい、陛下は赴かれました」

「採掘所……?」

島育ちで採掘所がなんたるかがわからないルチアは、怪我人を心配しながらも聞いてみる。

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