国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
 ユリウスから昼食に誘われて、ルチアの顔に花が咲いたような笑みが浮かぶ。それからすぐに首を大きく左右に振る。

(わたしはどうしたらいいの?)
 
ユリウスを拒絶する心と、好きな気持ちで複雑だ。冷たくされると悲しくなるし、キスをされると身体が熱くなって心が満たされる。
 
ぼんやり考えているところへアローラが衣裳部屋から戻って来た。レースがふんだんにあしらわれたクリーム色のドレスを抱えている。

 

クリーム色のドレスに着替えさせられたルチアは鏡の前に座っていた。

アローラが丁寧にルチアの長い髪を梳いている。城へ来てから質のいい石鹸で髪を洗っているせいで、淡いブロンドは波打つような艶になってきた。

「髪の毛はひとつに結んでもらえますか?」

「わかりました」
 
アローラはルチアの髪を後ろで三つ編みにしてピンク色のリボンで結んだ。
 
こうして着飾ったルチアを見ると、アローラはエラより気品があると心の中で思う。

「のちほど参りますので」

「はい。よろしくお願いします」
 
ルチアはアローラを窓際で見送った。
 
部屋にひとりきりになったルチアはユリウスからもらった絵本を開く。

文字は読めるが、スラスラとまではいかない。絵本は文字が読みやすく、絵が描かれておりルチアは気に入っている。
 
絵本は以前、島でユリウスが人魚の話をしてくれたもので、海やかめ、そしてベニートそっくりのイルカも描かれている。

そしてなによりも驚いたのは人魚が自分の容姿に似ていたからだ。

キラキラ光るブロンドの長い髪、海の中を自由自在に泳ぐ人魚。

違うとすれば人魚に足はなく、魚のような足ひれ。
 
大好きになったこの絵本だが、読むと無性に島へ帰りたくなってしまい、気持ちが落ち着かなくなる。
 
ルチアはパタンと絵本を閉じると、窓の外に視線をやった。


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