国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「ルチア、体調はどうだい?」

 
アローラに案内されてユリウスの執務室へ入ると、机に向かっていた彼が立ち上がりルチアを迎える。

「大丈夫……です」
 
立派な衣装を着てこの部屋にいるユリウスは、本当に国王なのだと実感してルチアの顔がこわばる。
 
自分の執務室でくつろいでいるユリウスはにっこり笑って、食事が用意されたテーブルへルチアを連れて行く。

「昼はそれほど食べないんだが、今日はルチアのために、特別に用意させた」
 
テーブルにはルチアのいつもの昼食より豪華な料理が並んでいる。しかもルチアが好きだと言ったものばかりだ。
 
アローラが搾りたての牛乳をグラスに注いでいる。

「魚も近くの島から取り寄せたものだよ」
 
蒸した大きな魚がある。白身で美味しい魚だ。細かく切った野菜が入ったクリームソースがかかっている。

このソースもルチアが城へ来てから好きになった味だ。柔らかそうな肉もあり、昼から贅沢である。
 
いろいろな味に慣れてきたルチアは食事の量も増えてきた。

「美味しそう」

「食べよう」

ユリウスは対面の椅子にルチアを座らせて、自分も席に着いた。
 
いつの間にかアローラは退出しており、執務室にはふたりだけ。

「アローラから鉱山の事故を聞いたの。鉱山の人たち、軽い怪我で済み無事だったと……」

「ああ。命が失われず安堵したよ」
 
ルチアはユリウスがたくさんの人を殺したことがあると聞いており、その言葉に驚く。いや、驚くというよりはユリウスに人を殺したことがあること自体、信じられない。

普段は温厚で優しいユリウスなのだ。

「鉱山は危険があるところ?」

「ないとは言えないな。採掘は深いところでの作業だから、掘った穴が崩れるときもあるんだ。そうだ、今度連れて行ってあげよう」

ユリウスは連れて行くと言ってから、ルチアの馬恐怖症を思い出す。


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