国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「海に負けたわたしは君をじっくり堪能していくから。ルチアは気にしないで海を見ていて」

ユリウスのキスが気になってしまい、ルチアは海を見るどころではない。
 
それどころか、本当にキスしてほしい唇を避けるように、ユリウスは甘い唇を落としていく。

海からの潮の匂いよりも、ユリウスの爽やかでいてほんのり甘く香る匂いにルチアの心臓はうるさいくらい暴れはじめている。
 
ルチアはユリウスの腕の中で身体を動かし、彼と向き合う。

「ユリウスさまは……意地悪です」

「わたしが意地悪?」
 
ユリウスは楽しそうな笑みを口元に浮かべて、ルチアの顎に手をかける。

「はい……」

「なにが意地悪なのかな?」
 
ルチアの顎をそっと持ち上げたユリウスは、揺れる彼女の瞳を見つめる。

「ルチアはどうしてほしい?」

「わたしは……」

「ルチア、わたしは君がほしい。君の身体を余すところなくキスをして、おもいっきり愛したい」
 
揺れるルチアの目が大きく見開く。

「ユリウス……さま……?」
 
ルチアは驚いて、顎にかかるユリウスの手を掴む。

「そんなに怖がらないで。今はまだそんなことはしない。時期が来るまで我慢しているんだ。わたしが君にできることは……これだけだ」
 
切なそうな表情でユリウスは顔を下げて、ルチアの戸惑う唇を食むようにキスをした。
 
ルチアを味わうように上唇と下唇を交互に何度も啄んだのちに、舌が口腔内へ。
 
深いキスをされながら、ずっとこのキスを待っていたのだと、ルチアは思った。
 
ルチアを部屋へ送ったユリウスは再び執務室へ戻り、窓辺に立っていた。
 
(ルチアは海が懐かしいようだったな……)

海に入るのが生活の一部だったのだから、入れない今は精神的につらいのかもしれない。

島に連れて行ってやりたいが、姫の件を解決するのが先決。

ルチアが姫だと確信はしているが、大臣たちが納得する確たる証拠が必要なのだ。

考えるユリウスは大きなため息を吐くと、窓辺を離れ、執務机についた。


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