国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
あと一時間ほどで太陽が沈む頃、執務室の扉が叩かれた。

「入れ」
 
ジラルドかと思ったユリウスだったが、扉を開けたのはアローラだった。なにやら血相を変えているアローラにユリウスは椅子から立ち上がる。

「どうした? アローラ」

「申し訳ありません。陛下、ルチアさんがお部屋にいらっしゃらないのです。もしかしたら陛下とご一緒かと思いましたが……」
 
執務室にルチアの姿はなく、アローラはがっかりした表情になる。

「なんだと!? ルチアは昼食後、少ししてから部屋へ送り届けた」

「ではいったいどこにおられるのか……城中を探し回りましたが、まったく見つからないのです」
 
ユリウスは海を恋しそうに見ていたルチアの姿が脳裏に浮かんだ。

「ルチアは海へ行ったのかもしれない」
 
後ろを振り返り、窓を開けて下を見る。
 
海のすぐ近くの石段に輝くプロンドが目に入った。

「ルチアはあそこにいる!」

「ええっ!? 失礼いたします」
 
アローラは国王の横へ行くと、窓から身を乗り出すようにして、下へ視線を向ける。かなり離れているせいでちゃんと確認できないが、ルチアのようにアローラも思えた。

「あんなところにっ! いつ城を出られたのでしょう!」
 
海を見ていたルチアらしき人物は石段を離れ、歩き始めた。

「陛下! 海に向かっています!」

「アローラ! わたしは先に行く! すぐに馬車で来てくれ!」
 
ユリウスは執務室を急ぎ足で出て行き、アローラもあとに続いた。


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