国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
そのとき、網に捕らえられていたイルカが大きく鳴いた。
 
ルチアはハッとなる。

「ベニート? ベニートなのね!?」
 
問いかけに応えるように、イルカは高い音で鳴いた。

「そのイルカを放して!」
 
船から男がひとり石畳に飛び移る。

「この娘、すごい上玉だぞ!」

頬に大きな傷をもつ男がルチアに近づく。ルチアはベニートが心配で、男になにをされるなどという考えはない。

「ベニートが苦しがっているわ! 放して!」

「それは無理だな。お嬢ちゃん。それともお嬢ちゃんがこのイルカの代わりに稼いでくれるのか?」

(この人はなにを言っているの……?)
 
じりっとにじり寄ってくる男、船からもうひとり石畳に飛び移り、ルチアに近づいてきた。
 
ルチアは頬に大きな傷を持つ男の手を避け、海に飛び込んだ。

「な、なんなんだ!?」
 
海に飛び込んだルチアに男たちは驚いている。

「お嬢ちゃん、ドレスが水を吸って溺れ死ぬぞ!」

「戻れ!」
 
ドレスはみるみるうちに水をたっぷり含み重くなった。しかし、泳ぎは誰にも負けないルチア。見事な泳ぎで、網にかかったベニートの元へ到着した。

「あの娘は人魚じゃないのかっ!?」

「おい、足はあったか?」
 
などと、顔を見合わせて呆気に取られている男たちだ。
 
ルチアは身体が重くなっていき、身動きが取れなくなっていたのがわかったが、ベニートを開放することだけに集中していた。

「娘! 網から離れろ! 溺れるぞ!」
 
船に乗っている男は網を引っ張る。陸にいた男たちも船に戻ってくる。
 
ルチアは力いっぱい網を引く。

「うわっ!」
 
網を引っ張っていた男が海に落ちた。


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