国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ベニートに絡みつくようだった網が緩み、ルチアは懸命に手を動かす。

海に落ちた男は船にしがみつき、どうやら無事のようだ。

「なんなんだ。この娘は……」
豪華なドレスのまま海に入り、溺れていないルチアに目を見張るばかりだ。
 
しかし今のルチアは体力がない。ようやく網からベニートが抜け出したのを見ると、ルチアの身体から力が抜ける。

「娘が沈むぞ! お前、泳げるだろ! 助けろ!」

「無理だよ! 俺が泳げてもドレスが重くて助けられない!」
 
男たちは慌て始めた。
 
ちょうどそのときだった。白馬から飛び降りたユリウスがためらいもせずに海に飛び込んだのは。
 
見事な泳ぎで、ルチアの沈んだ場所を目当てに向かうと、海の中へ潜る。
 
ユリウスは目を凝らし、ルチアの元へ行こうとしたとき、ベニートが彼女の下に身体を入れて水面に出ようとしているのが見えた。
 
あのイルカはベニートなのかと、ユリウスは驚く。
 
島で一緒に泳いだイルカのようだが、遠いこの場所にいるとは信じられない。しかし、イルカはルチアを助けようとしている。
 
ユリウスはルチアの腕を掴み、海面へ顔を出させた。

彼もドレスほどではないが水を吸う服を着ており、まとわりつく服が邪魔である。

「ユリウスさまっ!」

ルチアは自分を海面へ引き上げた人物を知ると、驚いてベニートから手が離れそうになった。

ユリウスのシルバーブロンドは水に濡れ、いつもより濃い色になっている。
 
そこへアローラと馬車の従者ふたりがやってきて、ぐっしょり濡れたルチアを引き上げる。

ユリウスも身軽に石畳へ上がり、ベニートを心配そうに見ているルチアの腕を強く掴み振り向かせた。


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