国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「ユリウス……さま……」

ルチアはびっしょり濡れたユリウスを見てから、視線を伏せる。
 
ユリウスをひどく心配させてしまったことで、ルチアは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。しかし、彼の次の言葉でルチアは顔を上げた。

「君には常識ってものがないのか!? どれだけ心配したと思っている!」
 
エメラルドグリーンの瞳に怒りを見せているユリウス。

「だ、黙って出てきたのは謝るけど、ベニートが捕まっていたの! 見過ごせるわけないわ!」
 
ルチアはさっきまであった船の場所を見ると、慌てたように去って行くところだった。

「勝手に城を抜け出すとは!」

「恐れ入ります、陛下」
 
アローラがユリウスに腰を折る。

「なんだ!?」
 
ユリウスは下唇を噛んで堪えているようなルチアを見ながら、噛みつくように返事をする。
 
軍神と恐れられているユリウスだが、この五年間激情にかられることはなかった。
 
しかし、愛するルチアの行動に腹を立てている。エラと城を抜け出したときは、身の危険はそれほどなかった。しかし、今回はドレスのまま海に飛び込み、もしかたら死んでいたかもしれないと思うと、ユリウスの全身に震えが走るほどだった。
 
ユリウスに怒鳴られ、ルチアはシュンと再び俯く。

「もう日も暮れます。このままではお風邪を召されてしまいます」
 
アローラの言葉にユリウスは苦い顔で頷く。

「ルチア、馬車に乗るんだ」

「馬車へ? 座席が濡れてしまいます」

「それならわたしの馬に乗るか?」
 
ユリウスが愛馬を顎で示すと、即座にルチアは大きく首を横に振る。


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