国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「みんなを巻き込んだのは申し訳ないと思っています。だけど、ベニートを助けられたことは後悔していないわ」

「君は……どうしたらエラのように大人しくしていられない?」
 
エラの名前が出て、ルチアは胸に痛みを感じた。

「わたしはエラじゃないもの。それに姫じゃないんだから、自由なはずです。おばあちゃんにも会いたいし、島でのんびり過ごしたいっ」

「君はエレオノーラだ! 馬が怖いのも三歳の頃の記憶が潜在意識に残っているからだ。だが確たる証拠がない」
 
ルチアを見つめるユリウスは眉をひそめ、苦しそうな顔になる。

「三歳の頃……?」

「馬がエレオノーラめがけて突進してきたことがあった。助けようとした侍女が馬に跳ね飛ばされて亡くなったんだ。君はそれ以来馬に近づかなくなった」
 
侍女が亡くなったと聞き、ルチアは息を呑んだ。

「エレオノーラは酷くショックを受け、一ヵ月もベッドから出られなかった。他にも君が姫だと思うことはある。しかし……」

「もう止めて! わたしは姫じゃなくてもいい」
 
ルチアは掴まれたままだったユリウスの腕を離した。

「ルチア! 姫じゃなければ、わたしと別れてもいいと言うのか?」
 
ユリウスはルチアが離れて行きそうで怖くなった。こんな思いは初めてだ。

「……今は……なにも考えられない」

「……わかった。考える時間はたっぷりある。この部屋でゆっくり考えてくれ」
 
ユリウスはルチアから離れると、扉へ向かう。

「誰かいないか!」
 
扉を開けながら叫ぶユリウスの前に、アローラが姿を見せる。

「陛下」

「ルチアを部屋から一歩も出さないように。侍女たちと交代で見張るんだ」

「かしこまりました」
 
アローラはユリウスに向かって深く膝を折り、礼をする。ユリウスは深いため息を吐いて扉の方を見ると、去って行った。


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