国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
アローラが部屋へ入ると、ルチアは暗闇が覆う窓の外を見ていた。

「ルチアさん、陛下は先ほどよりさらにお怒りを見せていました。なにを言ったのですか?」 
 
アローラはこのふたりを応援していた。自分になにかできることがあればと、聞いてみたのだ。
 
アローラの方へ向き直ったルチアは小さく首を横に振る。その顔は寂しそうだ。

「心配をかけてしまってごめんなさい」

「しばらくすれば陛下のお怒りは解けると思います。大人しく部屋でお過ごしください」

「そうするしかないみたい……」
 
ルチアは小さく微笑んだ。


 
翌日、エラがやって来た。

「ルチア! 部屋から出てはいけないって聞いたわ」
 
エラは驚いた表情で、ルチアの元へやってくると対面の椅子に座る。

椅子に座るルチアの手元の絵本にエラはちらりと目をやる。

「それは?」

「これはユリウスさまからいただいた絵本よ」
 
エラはユリウスからそういったプレゼントをもらったことがなく、ムッとなる。

「そんな幼稚なものをユリウスさまが?」

「幼稚……確かにわたしはやっと字が読めるようになったんだもの。この絵本は宝物よ。とてもステキなの」
 
ルチアは絵本を大事に胸に抱く。

「気に入ってよかったわね。わたしなら宝石や最高のドレスの方が嬉しいわ」

「あ、アローラ、お茶をちょうだい」
 
扉の近くに控えているアローラにエラはこの部屋の女主人のごとく命令する。

「ただいまお持ちいたします」
 
アローラは隣にいる侍女に頷くと、部屋を出て行った。

「外に出られないなんて、退屈でしょう?」

「……しかたないわ……ここにいればユリウスさまに心配をかけることもないし……」
 
ルチアはあきらめた様子で小さくため息を漏らす。

「わたしが外に出てもユリウスさまはなにも言わないのに。きっと姫のように振る舞って出歩いてほしくないのね」

「エラっ! わたしは姫のように振る舞ってなんてしてないわ」

エラは誤解している。
 
ルチアはわかってもらおうと、強く言った。


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