国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「お茶はまだかしら? 喉が渇いたのに」

エラは戸惑う瞳を向けるルチアを無視して、部屋の中へ視線を動かす。
 
気まずい空気が流れたのち、お茶を持ったアローラはやって来た。
 
アローラはふたりの前の丸いテーブルの上にローズの香りがするお茶と、果物がたっぷり乗ったタルトを置いた。
 
エラはなにも言わずにお茶を飲み、タルトを頬張る。

「お城は美味しいものばかりで困ってしまうわ。ここへ来た頃のドレスのウエストがきつくなってきちゃって。縫製が悪いのかしら。それとも生地かもしれないわ」
 
美味しいものばかりで困っていると言うからには、ウエストがきつくなった理由がわかるであろう者なのだが。
 
ルチアはお茶を一口飲んだだけでなにも言わなかった。
 
エラが幸せなら、そんなこと気にしなくてもいい。ルチアはそう思った。


 
ユリウスが怒りを見せてから、ルチアの元へ彼は現れない。

あれから1週間が経ち、アローラから庭へ出ることは許されたと言われた。
 
ずっと部屋にいるルチアに元気がなくなったと、ユリウスはアローラから報告を受けたからだ。行動を制限することによって、またユリウスの心配事が増える。
 
ユリウスはますます姫の件を早く解決しなければと、焦っていた。

 
ルチアが部屋で本を読んでいると、アローラが明るい表情でやって来た。

読んでいた本をパタッと閉じる。部屋でやることといえば、本を読むことしかなく、ルチアの読書力は普通の女性と同じくらいになっていた。

「ルチアさん、明日の夜会に出席できますわ」

「や……会……?」
 
ルチアは夜会が理解できず、首を傾げてアローラを見つめる。

「貴族たちが出席できる夜に行われるパーティーです。それはそれは華やかで」

「……わたしは出ません」
 
あれからユリウスは一度も顔を見せてくれない。あの出来事がそれほどの怒りだったのだと、ルチアはずっと思い悩んでいた。

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