国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「まあ! それは許されないですよ。陛下は必ずルチアさんを出席させるようにとおっしゃっていましたから。陛下とダンスも出来るのです」

「それなら……それなら……」

(ユリウス自身が来て、言ってほしい。もう怒っていないからと)

悲しくなってきてルチアの瞳が潤んできた。

「それなら……?」

「……いいえ、なんでもないです。わたしはダンスもできないし、作法もわからないし……出たくないと伝えてください」
 
アローラがユリウスに言いづらいかもしれない。

「いえ、ここへ来るように伝えてください」

「ルチアさん……わかりました。ちゃんとお伝えして、こちらへ来られるようお願いしてきますわ」
 
アローラは本を持つルチアの手に力がはいるのを見た。
 
翼をもがれた鳥のようだと、アローラは思った。
 
島であったルチアははつらつとした娘だった。

今はあまり笑うこともなく、ただユリウスの怒りが解けるのを待っている。そんな感じに見受けられる。
 
ルチアに城の生活は窮屈なのかもしれないと、アローラは思った。

アローラからルチアの様子を聞いたユリウスは、多忙な執務後の夜遅くに彼女の部屋へ向かった。
 
隣国へ送っている密偵から、我が国の鉱山を狙っている情報が報告されたのだ。
 
その対策にこの数日、ユリウスは忙しかった。
 
この時間、ルチアは就寝の用意をしているだろう。

部屋の前まで来ると、扉を三回ノックする。扉が内側から開く。アローラだ。

彼女はユリウスに深くお辞儀をすると、持ち場を離れた。



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