国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「ルチア!」

 
笑顔のユリウスは扉を開けてルチアを呼ぶ。だが、部屋にルチアの姿が見当たらない。
 
後から入って来たアローラも主が不在の部屋に首を傾げる。

「ルチアさま? どこへ……陛下、中庭へ出られているのかもしれませんわ。行ってまいります」
 
アローラはドレスの裾をひるがえし、部屋を出て行った。
 

ルチアはどこを探してもいなかった。

「いったいどこへ行ったんだ!?」
 
ユリウスは執務室でルチアの情報を待っていた。

嫌な予感に襲われ、じっとしていられず、窓の外を何度も見たり、部屋の中をウロウロと歩き回っている。
 
落ち着いていられず、ユリウスは剣を手にすると、執務室を後にした。出たところで、ジラルドと近衛兵数人が彼の元へ駆けて来る。

「ユリウスさま、ルチアさまは裏城門から男と一緒に馬車に乗ったそうです」

「なんだって!? 自分からか?」

ユリウスの顔が歪む。

「門番によれば、そのようでした。男は風貌から言って、島のあの若い男のようです」

「どういうことなんだ……? とにかくその馬車を見つけろ。わたしは街へ出る!」
 
近衛隊長である男に命令すると、彼らは走り去っていく。
 
ユリウスは愛し合い、ひとりで出かけないよう話をしたばかりで、島の男と出かけるルチアに違和感を覚えていた。
 
ジラルドを従え、城の中央口へ向かう。ルチアを探しに出ることもあるかと、待機させていた愛馬にユリウスは飛び乗った。
 
ユリウスとジラルドを乗せた馬は城の敷地を走り抜け、正門へ到着した。そこでユリウスが目にしたのはルチアと出たはずのジョシュだった。
 
正門を守る衛兵らに、ジョシュはなにかを叫んでいる。
 
ユリウスが馬から下り足早に近づくと、国王に気づいた衛兵たちが敬礼する。

「陛下! ルチアが大変なんです!」
 
ジョシュはフラフラになりながら、地面に両膝を着く。


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