国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「ユリウスさま!」

大広間の入り口に姿を見せたユリウスの元に、ジラルドが足早にやって来る。

「エラは?」

「部屋にいなかった。どこにいるのかわからない。こちらはなにかわかったか?」
 
大広間には近衛隊長がいた。

「はい。確信はありませんが、ラーヴァの港から正午前にカタリナ号が出航したと」

「出航の許可は出していない。いったい誰が……?」
 
ユリウスはジラルドからジョシュに視線を移す。頭に布を巻いたジョシュは膝を抱えて考え込んでいる様子だ。

「もしかしたら!?」
 
突然、ジョシュは立ち上がる。乱暴に立ち上がったせいで、頭の傷がズキンと痛む。

「陛下! 頭をなにかで殴られ、意識をなくすとき、命令する声がどこかで聞いた声だったんです」

「それは誰だ!?」
 
ジラルドはジョシュに詰め寄る。

「それが……」
 
そこまではわからないようで、ジョシュの視線が伏せられる。

「ジラルド、わかってきた。この男が、聞き覚えがあり、カタリナ号を出向させられる者が」

「ああっ! バレージですね! そう言えばアローラが夜会でバレージがルチアさまに気がかりな言葉を言っていたと」

「気がかりな言葉?」
 
ユリウスの声色が更に低く、鋭くなる。

「はい。街で暮らしたくなったら俺のところへ来いと。ルチアさまに気があるようだとアローラは言っていました。ただ、いったい船でどこへ……」

「海は広い……あてもなく探し回れば燃料がなくなってしまう……」
 
ユリウスとジラルドが頭を悩ませていると、なにか思い出したようなジョシュが口を開いた。


< 159 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop