国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「部屋へ戻れ。ここにいても仕方ない」

「わたしをいったいどうするの?」
 
バレージに腕を掴まれ立たせられると、ルチアは顔を上げて睨みつける。

「この船で敵対国へ行き、お前は俺と暮らす」

「わたしはあなたと暮らさないわ! ラーヴァの港に引き返して!」
 
ルチアは乱暴にバレージの腕を振りほどこうとするが、屈強な体躯の男に敵うわけがなく、息を荒くして疲れるだけだった。

「お前にはやってもらいたいことがある」

「わたしにやってもらいたいこと?」

「以前、お前が潜り、ジョシュに確かめさせた岩があるだろう? どうやらあれが沈んだ船のようなんだ」
 
バレージは楽しげに口角を上げる。

「あのとき、ジョシュは岩だったって言ったわ!」

「いや、エラの話だとジョシュは確信がある口ぶりだったと。皮肉にもお前は自分で両親が亡くなった悲劇の船を見つけたようだな」

「わたしの両親じゃないわ。まだ決まっていない」
 
ルチアはバレージに連れられ、先ほどの部屋に向かって歩かされている。

「お前が姫じゃなくても問題ない。むしろそうでない方が俺には都合がいい。姫でなければ国王はお前を縛る理由がない」

「ユリウスに縛られているんじゃない。愛しているの。姫じゃなくても、ユリウスのそばにいたい。妾でもいいもの!」

「バカな女だな。他の女と幸せな場面を一生見せつけられるんだぞ? ちやほやしてもらえるのも今だけだ」
 
バレージが鼻で笑ったとき、先ほどの部屋の前に着いた。
 
ルチアは部屋の中へ進まされる。

「この船には俺の部下が大勢乗っている。逃げられないぞ。昼食を用意させている。それまでここにいろ」
 
それだけ言ったバレージは部屋を出た。ルチアは力なくベッドに座り、両手で顔を覆った。


< 162 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop