国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「どうしよう……あのとき、ユリウスさまに言っておけば……エラが嘘をついたなんて……ジョシュは大丈夫なの……?」

 
エラの嘘に傷つき、悲しみが押し寄せてくる。

「でも、エラはユリウスさまが好きだから、こんなことを……」
 
涙が溢れ出てきたが、手の甲で乱暴に拭く。

「泣いてなんていられない。どうにかして島を見つけてそこまで泳いで逃げなきゃ」
 
涙を拭いたルチアは床に足を降ろすと、なにか必要になるものを探そうと引き出しを開けていく。
 
引き出しの中にきちんと畳まれた男物の白シャツと濃紺のズボンが入っていた。

「これは誰のもの……?」
 
手に取って見て思い出す。

「これは島に来た近衛隊が着ていた服だわ」
 
ルチアは自分の姿を見下ろす。何枚も重なったドレスを着ていては俊敏に動けない。近衛隊の服はかなり大きそうだが、なんとか着られなくもない。この服の方がドレスよりははるかに動きやすい。
 
ルチアはドレスを脱ぐと、白シャツと濃紺のズボンに着替えた。緩いウエストはドレスのリボンで結び、白シャツは裾を前で結ぶ。

「うん。動きやすい」
 
そのとき、船が大きく揺れてルチアはベッドの方へ投げ出された。

「きゃっ!」
 
大きな揺れは一回だけだが、廊下を走る慌ただしい足音が聞こえてきた。

「なにかあったの……? あんなに大きく揺れたんだから座礁……? でもさっきはそんなのはありそうもなかった」

ルチアは起き上がり、扉へ向かった。扉の取っ手に手をかけたとき、外側から大きく開かれ、バレージが入って来た。

血相を変えた顔つきで、目がつり上がっている。

「来い!」
 
着替えた姿を見てもなにも言わず、バレージはルチアの手首を掴むと、廊下を強引に歩く。


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