国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「見るところ、偉大なる軍神はひとりでの乗り込んできたようだな」

 
ユリウスの左右を取り囲むようにいるのはバレージの部下たち。ユリウスがひとりに対し、大勢では分が悪い。

「ユリウスさま! 船に戻って!」

「バレージ! ルチアを放せ!」
 
今朝見たドレスシャツに黒のズボン、膝までのブーツを履き、今のユリウスはシルバーブロンドの髪を後ろでひとつに緩く結んでいる。
 
ルチアに向けた瞳は危惧しており、優しいユリウスだったが、すぐにバレージを睨みつける。

怒りに燃えた目を向け、まさに軍神さながらの気迫をバレージに向けていた。

「国王、城に戻るんだな。娘が死んでもいいのか?」
 
バレージは剣を鞘から抜いて、ルチアの首にあてる。

「バレージ! 卑怯な真似は止めてわたしと戦え!」
 
ユリウスは怒気を含んだ声色でバレージに剣を向ける。

「それは無理というもの。卑怯な真似をしなければ、軍神には勝てないからな。この娘の命が惜しければ剣を置け」

「ユリウスさま! それはダメです! わたしを気にせずに戦って!」
 
ルチアは叫ぶが、ユリウスは剣を無機質な甲板の上に置こうとしている。

「ダメっ!」

「愛しい者が傷つけられるのを見ていられるか?」
 
ルチアに言い、鼻で笑ったバレージはブーツにつけていた短刀をユリウスめがけて投げた。

「きゃーっ!」
 
ユリウスめがけて飛んでいく短刀に、ルチアは悲鳴をあげる。
 
その刹那、バレージが投げた短刀はユリウスの腹部に刺さった。避けずに短刀を受け止めたのはルチアのためだ。

「うっ!」

「ユリウスさまっ! ユーリ!」
 
愛する人の元へ行きたいのに、バレージの手が外されるわけもなく、ルチアは悲痛な叫び声をあげた。


< 165 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop