国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
海に飛び込んだルチアは死を覚悟した。深く暗い海は泳ぎが達者なルチアでも怖い。

しかし、ユリウスのためなら、死も怖くない。
 
自分のためにユリウスになにかあれば、生きていられない。あの瞳はルチアのためなら、ユリウスも死を選ぶ。そんな目だった。
 
そのとき、深い海の底からなにかがやって来るのがわかった。

(ユリウスさまっ!)
 
覚悟した痛みはなかった。
 
ルチアと向かって来た魔物の間に、なにかが遮ったのだ。
 
ぎゅっと閉じた目をルチアは開けた。
 
遮ったなにかはルチアの元へ戻って来た。

(ベニート!!)
 
ベニートはサメから守るようにルチアの横にぴったりくっつく。

ルチアを丸呑みできそうなほど大きいサメは、ルチアとベニートの周りをゆっくり回っている。どこから攻めようと考えているようだ。
 
恐怖を覚えながらもルチアは息が苦しくなって海面に顔を出す。

「っはぁ……」
 
次の瞬間、ルチアの身体が浮いた。ベニートがルチアを背に乗せたのだ。

「ベニート! ありがとう!」

「ルチア!」

カタリナ号の甲板からジョシュがルチアを見つけて叫ぶ。

「ジョシュ! わたしは大丈夫よ!」
 
ルチアは手を振った。
 
そのとき、断末魔の叫び声のあと、甲板から大柄な男が大きな水しぶきをあげて海に落ちた。

海に落ちたのはバレージだった。あっという間に、バレージに先ほどのサメが近づき、身体を水中に引きずって行った。

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