国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
それを目の当たりにしてしまったルチアは息を呑んだ。小さな叫び声がルチアから漏れたとき、ユリウスの声が聞こえてきた。

「ルチア! 大丈夫か!?」
 
バレージが落ちた場所から、剣を手にしたユリウスが顔を覗かせていた。

「ユリウスさま!」

「おお……神よ……」
 
ルチアの無事な姿にユリウスは胸の前で神に感謝した。

「ベニートが助けてくれたんです!」

「すぐに迎えに行く!」
 
ユリウスはバレージの部下をジラルドと近衛隊に任せ、ルチアを迎えに行った。


ユリウスがカタリナ号から乗って来た船に移り、横に設置された階段のところへ着いたとき、ルチアはその階段を駆けあがっていた。

「ルチア!」

「ユリウスさまっ!」
 
甲板の上でユリウスは大きく手を広げ、ルチアを抱きとめた。

「君を失ったかと思った……」

「ユリウスさま……怪我は!?」
 
抱きしめる腕の中から少し離れて、ユリウスの腹部を見れば最後に見たときより出血が広がっているように見えた。

「大丈夫だ……」

「でも、顔色が」
 
ルチアはユリウスの酷い出血に泣きそうな顔になる。

「それは君が心配させたからだ」
 
ユリウスは瞳を潤ませたルチアにキスをした。

それからルチアを離したユリウスはその場にズルズルと座った。

「ユリウスさまっ! ユリウスさまっ!」
 
甲板に力なく倒れたユリウスは意識を失っていた。


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