国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
半年後。

ユリウスとルチアは両親を乗せた船が沈んだと思われる場所に、大きな花輪を投げ入れた。

「お父さま、お母さま、わたしは明後日ユーリの妻になります」
 
神妙な面持ちのルチアは海に向かって言葉にした。これから幸せになるのだが、過去にここで亡くなった両親を想うと悲しい。

「叔父上、伯母上、ルチア、エレオノーラを永遠に愛し続けると誓います。15年前、彼女が生きていたのが奇跡です。その奇跡を大事にしてエレオノーラを幸せにします」

 
はっきり誓いの言葉を口にしたユリウスは、瞳を潤ませるルチアの腰に腕を回す。

「あれから半年が経ったなんて……」
 
ルチアはあの事件を思い出すと、小さなため息を漏らした。
 
腹部を短剣で傷を負ったユリウスは半月ほどベッドから出られなかった。
 
この事件はバレージ子爵が首謀者であり、それを手伝ったエラは罪人だ。
 
しかし、エラは両親とともに忽然と消えており、よその国へ逃げたようで見つからなかった。ルチアは温情をかけてほしいとユリウスにお願いし、他国へ逃げたエラを探させることはしなかった。
 
ルチアを育てた祖母は罪を問われず、今はジョシュと共に島で暮らしている。
 
そしてルチアのために、ユリウスは島に頑丈な家を建てさせている最中だ。いつでも遊びに行け、ひどい嵐に見舞われたときにはそこが避難所になるように。
 
ゆらゆらと海に漂う華やかな花輪を見つめているふたりの元へ、ジラルドがやって来た。

「ユリウスさま、そろそろ島へ向かいませんと」

「そうだな。もう行かなくては。ルチア、おばあさんが首を長くして待ってるよ」

「はい! 泳ぐのが待ちきれないわ」
 
ルチアは瞳を輝かせる。

「ルチア、君は泳ぐつもりだったのかい?」

「えっ? ダ……メ……? ベニートと泳ぎたいなって」
 
これから祖母とジョシュ、島のみんなを迎えに行く目的があったが、ルチアはなによりもベニートや魚たちと泳ぎたかった。
 
困惑する愛しい姫を見て、ユリウスはフッと笑う。

「それをやめさせたら、明後日の結婚式をやめると言いかねないな」

「そ、そんなこと言いませんっ」

「たっぷり泳いでくるといい。ただし、疲れすぎないように」
 
ユリウスはルチアの額にキスをしてから、ピンク色の唇を啄む。

「ユーリ、ありがとう」

「ルチア、君をずっと愛していた。捜索隊を出さなければ一生君に会えなかっただろう。君に会えてわたしは幸せだ。王妃になっても、やりたいことはなんでもやらせてあげたい」

「ユーリ、ありがとう。わたしとても幸せ」

「愛してる。わたしの人魚姫」

もう一度、ふたりの唇が重なる。

心地よい風がふたりを包み込んでいた。



                               END
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