国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「エラと少し話していたの」
ルチアは鍋の中の茶色い液体をカップに注ぐと、ジョジュの横に座り差し出す。
「はい。全部飲んでね」
「言われなくても飲むよ。今日も一日大変だからな」
「ジョシュ! 今日も一日って、行くつもりなの!?」
ルチアはエメラルドグリーンの目を丸くした。
「俺が行かなかったら、みんなに迷惑がかかる」
苦く嫌な臭いのするカップを一気に飲み干すとジョジュは立ち上がった。その途端、足元をふらつかせる。
「今日は無理よ! 倒れたらみんなにもっと迷惑がかかるんだよ?」
「そうだ、ジョジュ。今日はゆっくり体を休めなさい」
小屋に戻ってきた祖母が眉間にしわを寄せながら口をはさむ。
「ばあちゃん!」
「今のお前が潜っても役にたちやしない。行くだけ迷惑さ」
「でもっ!」
ふたりが話しているところを、ルチアはそっと抜け出した。
あの男のいる帆船へ行かなくてはならない。ルチアは口元を引き締めて風のように走り、帆船へ向かった。
帆船の上る階段で警備の男がふたり立っていたが、ルチアのことを聞いていたらしく、上がるように言われる。
階段を上る足が、かすかに震えている。
(大丈夫! 取って食われたりしないんだから)
階段を上りきり、裸足で甲板の上に立つ。
「ほう……やはり昨日は見間違えじゃなかったんだな」
向こうからゆっくり歩いてくるバレージ子爵。
近づくいかつい顔と軍服に、虚勢を張っていたルチアはひるみそうになる。
「お前ほど美しい娘がなぜこんなところに留まっている?」
(わたしが美しい?)
日焼けして、長い髪以外は男の子っぽく、自分は美しいとは思えない。
ルチアは耳を疑う。
「口がきけなくなったのか?」
「そんなの、決まりきっています。ここに家族がいるからです」
「お前が街で働けば……いや、貴族の愛人になればこんなみすぼらしい格好をしなくてすむぞ。どうだ? 世話をしてやろうか?」
(どういうこと? この男はわたしを貴族の愛人にさせようとしているの?)
ルチアは腹をたてるが、ここで逆らえばどうなるかわからない。
ぎゅっと下唇を噛み、怒りを堪える。
ルチアは鍋の中の茶色い液体をカップに注ぐと、ジョジュの横に座り差し出す。
「はい。全部飲んでね」
「言われなくても飲むよ。今日も一日大変だからな」
「ジョシュ! 今日も一日って、行くつもりなの!?」
ルチアはエメラルドグリーンの目を丸くした。
「俺が行かなかったら、みんなに迷惑がかかる」
苦く嫌な臭いのするカップを一気に飲み干すとジョジュは立ち上がった。その途端、足元をふらつかせる。
「今日は無理よ! 倒れたらみんなにもっと迷惑がかかるんだよ?」
「そうだ、ジョジュ。今日はゆっくり体を休めなさい」
小屋に戻ってきた祖母が眉間にしわを寄せながら口をはさむ。
「ばあちゃん!」
「今のお前が潜っても役にたちやしない。行くだけ迷惑さ」
「でもっ!」
ふたりが話しているところを、ルチアはそっと抜け出した。
あの男のいる帆船へ行かなくてはならない。ルチアは口元を引き締めて風のように走り、帆船へ向かった。
帆船の上る階段で警備の男がふたり立っていたが、ルチアのことを聞いていたらしく、上がるように言われる。
階段を上る足が、かすかに震えている。
(大丈夫! 取って食われたりしないんだから)
階段を上りきり、裸足で甲板の上に立つ。
「ほう……やはり昨日は見間違えじゃなかったんだな」
向こうからゆっくり歩いてくるバレージ子爵。
近づくいかつい顔と軍服に、虚勢を張っていたルチアはひるみそうになる。
「お前ほど美しい娘がなぜこんなところに留まっている?」
(わたしが美しい?)
日焼けして、長い髪以外は男の子っぽく、自分は美しいとは思えない。
ルチアは耳を疑う。
「口がきけなくなったのか?」
「そんなの、決まりきっています。ここに家族がいるからです」
「お前が街で働けば……いや、貴族の愛人になればこんなみすぼらしい格好をしなくてすむぞ。どうだ? 世話をしてやろうか?」
(どういうこと? この男はわたしを貴族の愛人にさせようとしているの?)
ルチアは腹をたてるが、ここで逆らえばどうなるかわからない。
ぎゅっと下唇を噛み、怒りを堪える。