国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「どうだ? お前のような素晴らしい容姿は貴族がこぞって欲しがるだろう」

「……私はここの生活で満足しています」

「ほう……つまらぬ男しかいないこの場所が気に入っていると」

バレージは口元を歪め、ルチアを品定めしているかのような視線を走らせる。

「男は関係ありません」

その身の毛がよだつ視線を無視し、ルチアは言いきる。

「バカな娘だ」

バカにした言葉に、再び腹をたてるルチアだが、相手の言葉に乗ってしまえば何が起こるかわからない。

ルチアは胸に留まっている視線から隠すように、長い髪を梳かすように前に垂らす。

彼女の考えていることがわかっているかのように、バレージは鼻で笑う。

「見事な髪だ。都へ行けば、大金を払ってでも手に入れたいと思う殿方が現れるぞ」

「……お願いがございます」

そっと海のような色のエメラルドグリーンの瞳をバレージに向けた。

話を変えたいルチアは、したでに出ることしたのだ。

「なんだ? 願いとは?」

浅黒い肌に良く合う褐色の瞳と、視線が絡む。

「わたしをみんなと一緒に潜らせていただきたいのです」

「お前が潜る?」

あっけにとられたようにバレージの口元が開く。

「はい。私も長く潜っていられます。どうかお願いします」

ルチアは頭を下げた。

「大変な労働だぞ?」

「もちろん承知しております」

「くっくっくっ。お前は愉快な女だな。いいだろう。今日からお前も潜るがいい」

「ありがとうございます」

行くように手で追い払われるようにされ、ルチアは頭を下げるとその場を去った。

帆船から見えない小屋まで行くと、ルチアは緊張してこわばらせていた肩の力をホッと緩ませた。


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