国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
半日が経つ頃には、ルチアの体力が失われつつあった。

しかし、潜らせてくれと言ったのは自分。弱音など吐いていられない。

探索隊の乗った小さな船が五艘、海面に浮いている。海中から浮上するときは、その船を目安にする。

初日、あと二時間くらいで太陽が沈む時刻、ルチアは海面へゆっくり浮上し、船に手をかけた。

いつもなら自分で船に上がらなければならないのだが、不意に腕が引っ張られ、痛みと共に身体が持ち上げられた。

「きゃっ!」

ドサッと、船底に身体が沈む。

「娘、体力の限界だろう?」

バレージの低い声がこもってルチアの耳に聞こえてくる。

ルチアは耳に指をやって、何度か手のひらで空気を抜く作業をする。

「耳がおかしいのか?」

「……すぐに治ります」

何度か繰り返すと、聞こえが良くなった。

「ここにいるのは、あとどのくらいですか?」

「まだ潜るつもりか? もうやめとけ」

バレージはルチアの淡いブロンドを見下ろす。

ルチアは顔を起こして、辺りを見回した。男たちは小さい船でルチアのように休むものもいれば、海面に顔だけ出し、プカプカと浮いているものもいる。

まだまだ沈んだ船は見つかる気がしない。

(休める時に休もう……)

ルチアはバレージに頭を下げると、船の隅に行き膝を抱えて座った。


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