国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
帆船がジョジュの目に小さく見えてきた。

潜りに行ったルチアが心配で、休むところではなかった。

「ジョシュ……」

遠くに見える帆船を見つめていたジョジュの耳に、エラの声が聞こえてきた。

「エラ、おじさんは大丈夫か?」

「うん。熱はあるけど、大丈夫そう。ジョジュはまだ起きちゃダメなんじゃないの?」

「ルチアが過酷な労働をしているのに、寝てらねえよ」

エラと話しながらも、近づいてくる帆船から目を離せないようだ。エラはそんなジョシュに寂しそうな瞳を向ける。

「ああ。あんな過酷な労働、やっぱりやめさればよかったとずっと後悔していたんだ。俺も行けばよかったってな」

「……そうだね」

エラもルチアを心配している。

しかし、ジョシュがルチアを心配するのは恋心もうかがえる。

ジョシュが好きなエラはそんな彼を見ていると胸が痛む。ルチアがジョシュを異性として見ていないことはわかっている。

だから、一緒に住む彼らにさほど嫉妬せずに済ませられるのだ。

数分後、帆船が近づくとともに、ふたりの足元が大きく揺れ始める。

これを何度も繰り返せば、麻のひもで結んだつなぎ目は緩み、この桟橋は崩壊してしまうかもしれない。

そして帆船は停まった。

ジョシュは甲板に淡いブロンドを探す。

甲板の手すりにもたれるようにして立っているルチアを見つけ、ジョシュはホッと肩を撫で下ろした。

「ルチア、元気そうだね」

ルチアの姿を確認したエラが言う。

「ああ。元気って言うわけじゃないと思うけどな。あの過酷な労働をして、元気でいられたらルチアは化け物だよ」

甲板から疲れ切った男たちが次々と階段を下りてくる。誰もが顔色が悪い。最後に下りてきたルチアはふたりの前に立った。

「ルチア! 大丈夫か?」

ジョシュは今にも倒れそうなルチアの腕を掴む。彼女の顔は青ざめ、唇が紫色に近い。


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