国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
残念な気持ちで見送ろうとすると、突然ユリウスの顔が近づいてきた。そして優しく唇が塞がれた。

驚きでルチアの目が大きく見開かれる。

「こうされるのは嫌?」

「……こんなことをするなんて、おかしいです」
 
言葉とは裏腹に、本当はもっとキスをしてほしい。

「少しもおかしくなんかない。わたしの腕の中にいる魅力的な君に触れたいと思うのは当然のことだよ」

「わたしが魅力的……?」
 
(こんな泳ぐことしか出来ない島娘のどこが魅力的なの……? 素晴らしく、魅力にあふれているのはアドリアーノさまのほうなのに……)

「君は自分をわかっていない。貴族の娘たちより美しい」
 
ユリウスは我慢が出来なくなり、もう一度唇を重ねる。今度は上唇を啄み、下唇の輪郭を舌でなぞり、ルチアの欲望を引き出すようなキスをする。
 
ルチアは貴族の娘たちより美しいと言われ、嬉しさよりも自分の身分を自覚してしまった。ユリウスともっとキスをしたい。けれど、自分は貴族の娘のようにはなれない。
 
ルチアはそっと顔を背けた。

「もう……ダメです。やめてください」
 
ユリウスから離れようと、身体を起こそうとする。

「わたしは君が……」

そう言いかけてユリウスは起き上がる。

「キスをしたことを謝らないよ。もう寝なさい」
 
ユリウスは部屋を静かに出て行った。
 
(アドリアーノさま……)

胸がギュッと締めつけられるように痛くなり、ルチアはそこに手を置いた。


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