国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ユリウスは甲板に出て、先ほどのルチアのように暗い海を見ていた。

そよそよとした風が彼のシルバーブロンドの髪を揺らす。
 
波はほとんどなく、船体はときおり緩やかに揺れるだけだ。
 
ユリウスはエラの両親の話を思い返していた。今頃、両親がエラに話をしているだろう。
 
ジラルドの推測通り、エラはこの反対側にある浜で見つけられた。エラはほぼエレオノーラだと断定できるであろう。

王弟家族を乗せた帆船が沈んだとき、街では大騒ぎになったがこの辺鄙な島では拾った娘が姫であることなどわからないのは、仕方ないこと。
 
夫婦は島を出て街で暮らしたいと望んでおり、エラを育ててくれた礼として屋敷を与えようと考えていた。十分生活できる金も。

エラはこれから城で過ごすことになり、会いたくなったときにはいつでも行けるようにとの配慮だ。
 
エラを城に慣れさせることが先決で、沈んだ船を探す件は保留にしようと考えている。
 
ここにいられるのもおそらく2日程度。
 
そう考えると、ここを去りたくない気持ちが心を大きく占める。
 
エラがエレオノーラだとすれば、どこの誰よりも彼女が王妃に相応しい。

ラウニオン国の婚姻関係は兄妹では不適格だが、次に王家の血が濃い者に決められる。

しかも従妹であるエレオノーラは生まれたときからの婚約者だった。
 
ユリウスの手すりを掴んでいた指先に力が入る。

「なにをお考えですか?」
 
背後からジラルドの声がした。軍神と呼ばれているユリウスには彼が背後から近づいていることはわかっていた。それは物思いにふけっていたとしても彼にはわかる。

「姫のことですね?」
 
ジラルドはユリウスの隣には並ばず、一歩下がった後ろで話す。

「まだ姫になったわけではない」

「おや、姫が見つかって嬉しいのではないのですか?」
 
ジラルドは片方の眉を上げて美丈夫の背中を見つめる。


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