国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「船の探索は打ち切る。十分な報酬を与えるように」

島の労働者たちの体調も気になっていたユリウスだ。これで健康を取り戻すだろう。

「わかりました。では明日にも帰船できますね?」

「明日? いや、2日後に帰船だ」
 
ユリウスは振り返り、渋い顔でジラルドを注視する。

「わかりました。そのようにしましょう」
 
ジラルドはなぜ2日必要なのか、尋ねなかった。

ユリウスがルチアに惹かれているのがわかっていたからだ。

近い将来、ユリウスはエラ……エレオノーラを妻にするだろう。その前に惹かれる娘と過ごすのも良しと考えていた。

一方、ユリウスはこの2日間でルチアに抱く気持ちをはっきりさせたかった。


翌日、朝食のあと医師がルチアの部屋を訪れ、平熱になり体調もよくなったことを確認した。

「薬が効いてよかったですよ」

「ありがとうございます」
 
ルチアは鼻の下にひげをたくわえた医師に微笑んだ。
 
目が覚めたときから、泳げるくらい元気になったのがわかっていた。

「こちらは先日忘れて行ったものです。これは持って帰りちゃんと飲むように」

医師が白い錠剤の入った小瓶をルチアに手渡す。

「あ……忘れていました。ごめんなさい」
 
すっかり忘れていた小瓶を見てから、ポケットにしまった。
 
そこへユリウスがやって来た。白いドレスシャツ姿の彼は気品に溢れ、近づくことが畏れ多いくらいな気持ちにルシアはなる。
 
昨日甘くキスをされたことが夢のように思える。
 
医師はユリウスに深くお辞儀をして部屋を出て行った。
 
ユリウスはルチアの隣に腰を下ろすと優雅な所作で足を組む。その一連の動作が流れるように美しい。隣にいてはいけない気がして、ルチアは思わず立ち上がる。

 
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