国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
立ち上がったルチアにユリウスの瞳が鋭く見る。

「わたし、もう帰っていいと。アドリアーノさま、ありがとうございました」
 
ルチアは頭を下げると、部屋を出て行こうとした。

「ルチア! なぜ逃げる?」
 
ユリウスは素早くルチアの手首を掴んだ。身体をビクつかせて振り返ったルチアの淡いブロンドがふわりとふたりの手に触れる。

「逃げてなんかないです」

「いや、わたしを恐れているようだ。昨晩のことが原因だね?」
 
ルチアは顔を赤くして俯いてしまう。

「話がある。座ってわたしの目を見てくれないか?」
 
ユリウスの切実な声色に、ルチアはやむを得ずベッドに腰を下ろした。ユリウスは窓際に置かれていたひとり掛けのソファを彼女の前に持ってきて座った。

「わたしたちは2日後に引き上げる。君たちの労働も終わりだ」

「えっ!?」
 
ユリウスと目と目を合わせようとしなかったルチアは驚いて顔を上げた。

(アドリアーノさまが帰っちゃう……?)
 
もちろん近いうちに街へ戻るのは十分承知していたルチアだが、2日後と知らされて言いようのない悲しみに襲われる。

「やっと目を見てくれた」
 
ユリウスは微笑むを浮かべたが、ルチアの顔は泣きそうだ。

「沈んだ船に乗っていた姫が見つかったんだ。いや、まだ姫と断定したわけではないが」

「姫さまが見つかった……」
 
昨日エラの両親が呼ばれていたことを思い出したルチアはピンときた。

「エラなんですね?」

「ああ……三歳の頃の姫とエラはよく似ているんだ。両親に聞くと、浜辺で倒れているエラを見つけたと……」

「船は見つけられなかったけれど、姫さまが見つかってよかったです」
 
嬉しいことなのにユリウスの顔が浮かない気がして、ルチアは小首を傾げる。


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