国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ふたりで歩いていると、島の者たちが必ずルチアに声をかけてくる。

まるで島全体が家族のような感じだ。どこへ行っても注目されてしまい、島を回らずに船で話をしていた方がよかったのではなかったのだろうかと、ユリウスは後悔していたが、ルチアは楽しそうだ。

ルチアの腰の下まである長い髪は一本に緩く三つ編みされており、ユリウスはほどきたくなる衝動にかられる。

「この先を行くと、浜辺に出ます」
 
エラが倒れていた浜辺に、ユリウスは興味が湧いた。
 
浜辺から望める海は遠浅で、外洋とかなり距離があるようだ。境目があるように手前はエメラルドグリーン、その奥は濃いブルーの海が広がっている。
 
浜辺には誰もいなかった。

「美しい眺めだ」
 
心が洗われるような景色にユリウスはため息を漏らしそうになる。

「はい。この先に洞窟があって、そこの岩から眺めるのが好きなんです」

「そこへ連れて行ってくれないか」
 
ルチアは了承の代わりに笑顔になって歩き始める。そこで小石につまずき転びそうになった。

「危ない!」
 
ユリウスは人より優れた反射神経でルチアの身体を支え、転ばすにすんだ。

「ありがとうございます」
 
足元を見ると、長いこと使っているサンダルの紐が切れてしまっていた。ユリウスはルチアを抱き上げた。

「ユ、ユリウスさまっ!?」

「洞窟まで行ったら、サンダルを直そう。わたしの首に腕を回して」
 
ユリウスはルチアを抱き上げたまま歩き始めた。手が心もとなく、戸惑ったのちユリウスの首へ回した。

まるでお姫さまになったかのような気分になるルチアだった。
 
少し行くと、せまい洞窟が現れた。その前に平らな岩がある。


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