国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
ユリウスはこのままずっとルチアを抱いていたかったが、平らな岩の前まで来ると、そっと下ろした。

「ありがとうございました」
 
ユリウスはルチアの目の前にしゃがみ、右足のサンダルを脱がせ、切れた紐を結び始める。

「あ、わたしが……」
 
ルチアはサンダルを取り上げようとするが、ユリウスは譲らない。
 
こんなに質素なサンダルは初めてだった。街へ連れて行きルチアに着飾らせ、贅沢をさせたいという思いが頭をよぎる。

「出来た」
 
紐を結び終え、丁寧な仕草でルチアの足に履かせる。

「ありがとうございます……」
 
ルチアの足にサンダルを履かせたユリウスは彼女の隣に腰を掛ける。
 
空は雲がところどころにあるだけで晴天。潮風が気持ちよく頬を撫でていく。

「ここの海はサンゴと小さな魚がいるんです。可愛い魚を見るのは好きだけど、サンゴは足を傷つけると膿んでしまうから、みんなはあまり来ないんです」

「それは危ないな。傷口が膿むと切断するような大事になりかねない」
 
戦場では他人ごとではない。ユリウスは何人も見てきた。

「切断……」
 
想像してしまったルチアはブルッと震える。

「だからそんな目に遭わないよう気をつけてほしい」

目の届くところにいつもいてほしい。その言葉が喉まで出かかったがユリウスは堪えた。
 
それからルチアは色々な話をしてユリウスを楽しませた。

普段は笑い声を上げないユリウスだが、ジラルドが聞いたら目を丸くさせるほどふたりはお腹を抱えて笑った。

そろそろ太陽が落ちてくる時間になった。

かなり長い時間をここで過ごしたが、まだまだいられるくらい充実していた。だが、ジラルドが心配する頃だろう。

「船で一緒に夕食を食べよう」

「ユリウス、今日はもう帰りたいの。おばあちゃんが気になって」

「……わかった。だが明日は夕食まで付き合ってくれるね?」
 
ユリウスといられるのも明日まで。ルチアは切なくなって、コクッと頷いた。



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