国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「ルチア!」

 
ユリウスに小屋まで送られて部屋の中へ入ると、床の上でゴロゴロしていたジョシュが起き上がってルチアを見る。

「遅かったじゃないか」
 
ジョシュはユリウスを見たことがなかったが、祖母から容姿を聞いてずっと落ち着かなかった。ジョシュはユリウスにルチアを取られるのではないかと心配している。

「そんなに遅くないでしょ」
 
ルチアは夕食の用意をしている祖母の元へ行く。

「おばあちゃん、ただいま」

「お帰り」
 
ルチアは祖母の顔を見て、まだ機嫌が戻っていないことを悟る。

(どうしたんだろう……いつものおばあちゃんじゃないみたい)
 
叱られることも多いが、すぐに普通に接してくれる祖母なのだが。
 
夕食はしーんと静まり返り、最初は船の中を話していたルチアだが、あまりの反応のなさに黙る。
 
食べ終わると、部屋の隅にアローラから借りた服が目に入る。

明後日の朝、帆船は出てしまう。ルチアは服を持って外に出ると、ランプの灯りを頼りに洗い始めた。

「ルチア」
 
ジョシュがいつの間にか目の前に立っていた。

「ジョシュ、どうしたの?」

「エラが姫かもしれないって?」

エラから午後に話を聞いたジョシュは驚いた。ジョシュはルチアから少し離れたところに腰を下ろす。

「うん……驚いたね。寂しくなっちゃう。ジョシュもそうでしょ?」
 
洗ったブラウスの水滴をしぼりロープに掛けると、スカートも同じく洗い始める。

「俺はお前じゃなくてよかったと思った」

「……エラはジョシュが好きなのに」
 
自分の言葉を聞いていないふりをするルチアに、ジョシュは苛立つ。

「俺は早く船もろとも早くいなくなってほしいね!」

「ジョシュ! なんてことを言うのっ!」
 
あまりにも酷いジョシュにルチアは立ちあがって、怒りをあらわにする。ジョシュはそんなルチアを無視して部屋の中へ入ってしまった。
 

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