国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
海は荒れ、気分が悪くなる乗組員も多く、静かに就寝どころではない。

気分は悪くはないユリウスだが、ルチアが心配で時間ばかり確認してしまう。
 
甲板に出て嵐はすっかり去った星が出ている空を見ていると、ジラルドがやって来た。

「甲板にお出になるのは危ないですよ」

「大丈夫だ。少し波が落ち着いてきたように思う」

ユリウスは星空から暗い海へ視線を向ける。

「そうですね。ひどい嵐でしたから島はひとたまりもないかもしれません。一応覚悟をされておいた方が……」

「なにを言うんだ! ルチアが死んでいるとでも言うのか!?」
 
ジラルドの言葉に憤慨したユリウスは彼の胸倉を掴んだ。

「はい。波に流されてもおかしくはありません。万が一のときに気を落とされないで、いただきたいのです。我が国の国王なのですから」
 
ユリウスは大きなため息とともにジラルドの胸倉を掴んでいた手を放した。

「それに生きていたとしても、結婚の相手は姫です。そこのところをわきまえてください」
 
ルチアが日陰の身で一生を過ごせるのか、一度は断られている。

今できることはルチアの無事を祈ることだった。

4時間後、島が見えてきた。

だんだん近づくにつれて、桟橋はどこかへ流され、島に点々と見えた小屋は見当たらない。

その現状にユリウスの顔が歪む。
 
沖で帆船を停泊させ、小さな船を数隻出す。

ジョシュは帆船を停泊させた途端、甲板から海に飛び込み島へ向かう。

船に乗ったユリウスは濡れるのもかまわず、島に近づくと海に飛び込み陸に降り立った。

「ルチア!」
 
数人の島民が倒れているのがわかり、船で運ばれていく。ユリウスはルチアの家を目指した。
 
ルチアの家があったと思われる場所でジョシュが立ちすくんでいた。小屋はがれきの山となっている。

「ルチア!」
 
ユリウスは木材を一枚ずつ退かしていく。ジョシュもショックから覚め、木材を退かしルチアを探す。
 
何枚も木材も退かしていると、淡いブロンドがユリウスの目に入った。


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