国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
「ルチア! ルチア! 神よ!」
 
ピクリとも動かない娘にユリウスに不安が押し寄せる。
 
ユリウスの声に、別のところでルチアを探していたジョシュやジラルドが駆けつける。

さらに木材を退かすとうつぶせになっているルチアがおり、その下に祖母がいた。

ルチアは祖母をかばうようにしていたのだ。
 
ユリウスはルチアを抱き上げる。

それから身体を上向きにしたとき、サファイアのペンダントが彼女の喉もとで揺れた。

見覚えのあるそのペンダントを見て、ユリウスは驚いた。

「どうしてこれをルチアが……?」

困惑している間にもジョシュとジラルドが祖母を助け出している。
 
ユリウスは平らな場所にルチアを横たえ、息をしているか確かめる。
 
そのとき、ルチアの瞼がほんの少し開き、瞳を覗かせた。

「ユ……」
 
再び、ルチアは意識を失くした。

「ルチア! ルチア!」
 
ユリウスはルチアを揺すって目を覚まそうとするが、深いこん睡状態に陥ってしまったようだ。

「ユリウスさま、祖母のほうも生きています」
 
ジラルドの報告に顔を上げると、ジョシュが祖母を抱いている。

「すぐに船へ!」
 
ユリウスはルチアを抱き上げると、ジラルドが目を見張る。

「どうして、そのペンダントが彼女の首にかかっているんですっ!?」
 
王家に伝わるペンダントで、ビビアーナ王弟妃がしているところをジラルドは記憶していた。絵画にもこのペンダントは描かれており、見間違えることはない。

「わからない。それはあとだ!」
 
ユリウスはルチアがなぜ身に付けているのか、疑問を感じながらも一刻も早く帆船に着くように走った。


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