国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
島民は流されてしまったのか、50名あまりのところ、25名助け出した。

亡くなっていた者もいる。長老もそのひとりだ。村の年寄りはルチアの祖母を除き、全員が絶命していた。
 
ルチアは側頭部と背中、左足を怪我していた。低体温で即座に身体が温められる。
 
信頼のおける侍女ひとりがルチアに付き添い、医師と共に手厚い看護をされるも、目が覚める気配がない。
 
祖母はルチアよりも軽い怪我で済み、身体が温められ静かに眠っているがまだ気づかない。ルチアの隣の部屋でジョシュが付き添っていた。

ベッドで眠るルチアの手をユリウスは握り、見守っている。氷のように冷たかった手はしだいに温かみを帯びてきている。

「ルチア、どうして君を島へ置いてきてしまったのだろうと、後悔ばかりだった」
 
ルチアの手を口元に置き、眠る彼女へ語りかける。

「どうして君はペンダントをしていたんだ……?」
 
もしかしたら姫はルチアなのかもしれないと希望が出てくる。
 
ルチアの首にあったペンダントは今、ジラルドが鑑定をするために保管している。
 
王都ラーヴァの港へ到着しても、ルチアは目を覚まさなかった。
 
助けられた島民らのほとんどは意識を取り戻していた。

ルチアの祖母も先ほど目を覚ましたが、ルチアをひどく心配して、興奮したため薬で眠らせたのだ。

 

ユリウスがルチアのためにアローラに用意させた部屋は彼と同じ棟の階。

婚約者であるエラは別塔の部屋で以前、王弟家族が住んでいたところだった。

ジョシュと祖母はエラと同じ棟に移された。
 
ルチアの側頭部の怪我は大事には至らなく、処置をされ包帯を巻いている。打撲箇所には薬が塗られ、左足の裂傷も
縫合され、神経は大丈夫なようだ。

「ん……」
 
ルチアは身体の痛みで目を開けた。ユリウスの顔が近すぎるほどのところにあって驚く。

「わたしは……夢を見ているの……?」

「いや、夢じゃない。気が狂うほど心配した」
 
ユリウスはルチアの手の甲にキスを落とす。

「ここは……?」
 
自分がとてもすごい部屋にいることだけはわかる。


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