神にそむいても
「どのようにしてこちらへ来たのですか?」
柔和な表情の中に鋭い視線がある。
いくら守られて生活しているからといっても、
身の危険を感じた経験はしたことがあるんだと思う。
だけど、どうやってって言われてもなぁ。
私がききたいくらいだし。
「……私の問いの意味がお分かりにならなかったのかしら?」
笑ってはいるけれど、目の奥が笑ってない。
「いえっ!!決してそのようなことではなくっっ」
「では聞き方をかえますわ。……あなたはお一人でこちらまで入ってこられたの?」
だから~!
逆に私がききたいんだよ、それ。
「……わからないんです」
「この期に及んで、そのようなっ!!」
老女が目を吊り上げる。
「そう」
一方の彼女はぷっくりとした形のよい唇を少しだけ動かす。
疑るというより理解してくれようとしている感がある。
そして、決して動じる様子はない。
「ねえ、うた。この方を上げて頂戴」
「姫!?なにをそのような物騒なことをっ!!」
「どう見ても他に使者や付きの者もない様子。
可哀想に土でひどく汚れていますわ。着替えたほうがいい」
「しかしっ」
「それに、私にそっくりの容貌よ。神の思し召しかもしれないわ。
邪険に扱うとおそろしいことが起こるような気がするの」
「……」
昔の人はやっぱり神とか祟りとか今よりもずっとおそれているんだろう、
うたさんはすっかり口をとざしてしまった。
「これは私の命メイよ。従ってちょうだい」
「……承知いたしました。美姫殿、こちらへ」
家の中に入る許可を得て、そのまま縁側のような場所から上がらせてもらう。
「ありがとうございます!」
私が頭を下げると、ニッコリと品良く笑みを浮かべる。
ホント、自分と似てる。
でも、そんな表情は別人そのもの。