銀色の月は太陽の隣で笑う
「具合が悪くなったらすぐに言うこと。さっきみたいに、走り出したりしないこと。できるだけ大人しく座っていて。分かった?」
コクっと頷いたルウンは、まるでお人形さんのようにちょこんと椅子に腰掛け、神妙な顔のトーマを見上げている。
「よし。じゃあ僕はキッチンに戻るけど、何かあったら呼んでね」
まるで首振り人形のようにコクっと頷き返すルウンに、トーマは苦笑しながらそっとその頭を撫でた。
撫でられる感覚に、ルウンは浸るように目を閉じる。
その穏やかな表情をしばらく眺めてから、トーマは名残惜しい気持ちを振り切って手を離した。
「すぐにできるから」
トーマの声に目を開けたルウンも、離れていく手の平に名残惜しさを感じながら頷き返す。
足早にキッチンに戻ったトーマは、調理を再開すべくまずは片手鍋を取り出した。そこにぶどう酒を注ぎ入れ、調理台に並べたスパイス類を次々と放り込んで火にかける。
分量なんかは正直適当で、記憶を掘り起こしながら、時にはカンを頼りに入れていく。